会社破産した後は仕事をしてもいいのですか?
1 はじめに
法人(会社)が破産する場合、代表者(社長)も会社の債務の連帯保証人になっているなどの理由で破産することが多いです。その場合、社長は今までの社長としての収入源も自分の財産も失ってしまうことになります。
この記事では、破産をした場合の社長の就職や起業について解説します。
2 破産と就職
会社が破産をする場合には、社長個人も経済的余裕がない場合がほとんどで、働かなければ生活できません。破産をするとしても、後記3のとおり、一定の職業を除き就職に制限があるわけではないので、なるべく早い段階で就職したほうが良いと思います。
新しく就職した会社が債権者でない限り、破産の通知が行くわけではないので、破産を知られずに新しい会社に就職して働くことは可能です。破産手続を開始すると官報に名前が載ってしまうので、調べれば破産したことはわかりますが、わざわざ官報を確認している人はほとんどいませんので、あまり気になさらないで良いでしょう。
ただし、破産の手続きを進める場合には、弁護士や管財人との打ち合わせや裁判所からの呼び出しがありますので、適宜休みをとる必要があることはご留意ください。
また、破産手続を開始したあとであれば、収入は自由に使うことができますし、給与を差し押さえられることもありませんので、その点もご安心ください。
3 破産と職業の制限
社長個人が裁判所に自己破産の申し立てを行い、破産手続開始決定が出ると、就けなくなる・資格が取り消される職業があります。例えば、宅地建物取引士、警備員、保険外交員等の職業については、法令で資格制限がされています。
宅地建物取引士は、宅建業法18条1項2号で、「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」は登録ができないとされています。他の職業も同様に資格の制限があります。
免責決定が確定し、破産手続きが終了すれば上記職業に就くこともできますが、破産手続が終了するまでには数カ月程度かかりますので、それまでは法令による制限のない職業に就く必要があります。
なお、個人再生の手続では、資格制限もありませんので、場合によっては個人再生も選択肢に入ります。
4 新たな法人の代表として業務を行う場合の注意点
会社や社長が破産する場合、社長が新たな法人を設立して業務を行うことがあります。破産する会社と新たな法人は別のものなので、形式的には問題ありません。ただし、以下の点に注意する必要があるため、あまりおすすめはできません。
すなわち、新法人の設立が破産手続開始決定よりも後だった場合でも、法人の設立資金
をどこから出したかが問題になります。裁判所や債権者から、会社や社長が財産を隠して新しい法人を設立したのではないかと、いわゆる財産隠しを疑われる可能性があります。財産隠しを疑われた場合、破産の手続に長い時間がかかることになり、様々な資料の追加提出を求められるなど、余計な労力も要することになります。
また、実際に財産を隠していた場合には、免責されない(債務をゼロにすることができない)ことや、詐欺破産罪として刑事告訴されるおそれもありますので、財産隠しは絶対にしないでください。
破産の手続きが終了するまでは、どなたかに雇用してもらうのが一番無難でしょう。
5 おわりに
破産の手続を行う際には、取引先や従業員等との関係でタイミングを計ることが必要であるだけでなく、免責されないことが無いように調整することが必要ですし、社長の今後の生活についても考えなければなりません。法人破産をお考えの経営者は、破産に詳しい弁護士に相談するのが良いでしょう。
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