M&Aの一般的な流れ
目次
1.M&Aの流れ
一般的なM&Aの流れについて、簡単に説明します。以下の説明は、M&Aアドバイザー(M&Aの仲介業者のこと)が関与する場合です。必ずM&Aアドバイザーが関与する必要があるわけではありません。
①売り手とM&AアドバイザーとのNDA・FA契約の締結
最初にNDA(秘密保持契約)だけを締結して、FA契約(ファイナンシャル・アドバイザリー契約)は後にすることも多いです。トラブル防止のため、遅くとも⑦までにはFA契約を締結しておきましょう。
②M&Aアドバイザーによる提案資料の作成
M&Aアドバイザーは、売り手側経営者から決算書などの一連の資料を提出してもらい、ノンネームシートやインフォメーションパッケージを作成します。
ノンネームシートとは、社名や本店所在地といった特定されるような情報は一切記載せず、業態、売上高、実質経常利益、売却希望金額、売却理由といった最低限の情報しか掲載しません。A4用紙1枚程度で作成されます。
インフォメーションパッケージには、企業名、過去数年分の財務情報、事業の特徴、強み・弱み、事業計画といったより詳細な内容が掲載されます。
③ネームクリアの確認
M&Aアドバイザーは、インフォメーションパッケージでの打診をする前には、必ず売り手側に資料や情報を渡しても良いかの確認をします(これを「ネームクリア」といいます)。売却についての情報が取引先や金融機関に知られ、悪い噂が流れるリスクがあるからです。
④買い手とM&AアドバイザーとNDA・FA契約の締結
買い手としても、まずはM&AアドバイザーとNDA契約及びFA契約の締結を行います。
⑤ノンネームシートでの提案
買い手の希望条件に見合いそうな案件があれば、M&Aアドバイザーからノンネームシートでの提案が行われます。
⑥買い手による検討
買い手は、M&Aアドバイザーから(売り手のネームクリアの確認がとれたことを前提に)、「インフォメーションパッケージ」などの詳細資料を受け取り、事業戦略上、買収が有効か否かを検討します。
⑦トップ面談の実施
経営陣同士の面談のことです。社長同士の価値観や会社経営に対する思い等、共感し合えるようであれば、M&Aもうまくいくことが多いでしょう。なるべく早くに実施し、場合によっては何回も行うことで、互いの価値観をすり合わせていくことも大事です。
買い手側としては、金融機関への融資の申出が必要であれば、トップ面談後に申出されてもよいでしょう。
⑧意向表明書の表示
買い手の本気度を示すものであり、売り手に対するラブレターともいえるものです。法的に提出義務はありませんが、M&Aを円滑に進めるためにも、提出した方がよいでしょう。
⑨基本合意契約書の締結
買い手候補の何よりのメリットとして、一般的に独占交渉権を与えられることがあります。そのため、買い手側としては安心してDD(デューデリジェンス)費用を負担することができます。
その他に、売り手買い手双方のメリットとしては、スケジュールの明確化と交渉の過程で合意できた内容の整理が期待できます。
⑩デューデリジェンスの実施
DDは必ず実施しなければならないわけではありませんが、買い手側は予期せぬリスクを少しでも避けるためにも、少なくとも①ビジネスDD、②財務DD、③法務DDは、実施されることをお勧めします。
⑪最終合意契約書の締結
M&Aにおいて、デューデリジェンス後、売り手と買い手の双方で売買の意思が固まった場合に、最終契約書を締結します。
契約書が締結される日とクロージング日(対象物の引き渡しと譲渡代金の支払いが行われる日)が異なる場合が多いため、クロージングを行う前提条件等について、合意しておく必要があります。
⑫クロージング
クロージングとは、M&Aに必要な作業がすべて終了し、譲渡対価の決済、株券、会社代表印の引渡しなどをすべて完了することをいいます。
クロージングを行う前提条件等について、売り手側は、最終合意契約書で合意した内容をすべて終了しておく必要があります。
具体的には、
①経営者の個人的な目的で購入された資産等の経営者による買取
②役員や幹部社員への面談(最終契約書にキーパーソン条項を入れておく場合があります)
③取引先の承認を得る手続き(Change of Control条項がついている取引先)
④不要な業務委託契約等の解除等
があげられます。
以上が、一般的なM&Aの流れになりますが、個々のケースによって、一部手続が省略されたりすることがありますので、ご注意ください。
M&Aに関してお悩みの経営者の方がいらっしゃいましたら、この分野に詳しい弁護士にご相談ください。