民事再生について
民事再生とは
民事再生は、債務超過などにより経営危機にある企業が、裁判所の関与の下で再建を図る手続です。
民事再生法は、経済的に窮境にある債務者について、債権者の多数の同意を得て、裁判所の認可を受けた再生計画を定めることなどにより、債務者と債権者の権利関係を適切に調整して、債務者の事業または経済生活の再生を図ることを目的としています(民事再生法1条)。
民事再生法は、会社更生法とは異なり、中小企業や個人事業者を適用対象の中心としていまいます。
民事再生の特徴は、①管財人を選任せずに債務者自身が主体となって手続を行うこと、②手続が比較的迅速に行われること、③情報開示を受けた上で債権者が自己責任で判断することです。
1999年に成立した民事再生法は、倒産扱いされるなどの誤解が多いのですが、全国的にも利用実績があり、多くのメリットがある会社再建の方法の一つです。
民事再生を活用する場合
事業の状況が悪化した場合、破産など会社を清算する方向に進むのか、会社を再建する方向に進むのかを検討することになります。
民事再生は、再建型の手続になるため、会社は存続し、財産を保持しながら事業活動を継続することになります。
事業を継続して、将来得られるであろう事業収入をもって複数の債権者に弁済を行っていきます。
民事再生手続において裁判所から認可を受けた弁済計画に従い、数年あるいは十年から十数年かけて債権の割合的部分を返済し、計画に従って弁済をしたら、残りの債務については責任を免除されることになります。
このため、会社としては、今後も事業活動を継続していくことができること、事業活動により一定の収入を得ることが見込まれ、弁済を継続していくことができること、事業用の財産を確保できることなどの条件が揃えば、民事再生手続を選択することを検討します。
民事再生手続の申立てを行う
民事再生手続は、裁判所に申立て書類一式を提出して申立てを行い、手続が開始されます。
再生手続が開始されるのは、①破産手続開始となる原因事実が生じるおそれがあること、又は②事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済できないという事実があるときです(民事再生法21条1項)。
つまり、破産までには至らないけれども支払不能となるおそれがあるときや、債務超過が発生するおそれがあることが、民事再生手続の開始に必要な事実となります。
民事再生の申立てを行うときには、裁判所に予納金を納める必要があります。
法人の場合、負債総額が5000万円未満の場合で、予納金は200万円程度が基準とされています。
(参考)東京地裁の予納金の額
再生手続の開始
申立てを行った後、再生手続開始の要件を満たす場合は、裁判所は、再生手続開始の決定を行います(民事再生法33条1項)。
開始決定がなされると、申立てをした再生債務者の財産に対する強制執行や、仮差押え・仮処分、破産、特別清算などの手続は禁止され、すでにこれらの手続が係属しても中断します(同法39条)。
再生手続の対象となっている債権について支払いを求める訴訟が係属していても、開始決定がなされると、その訴訟手続は中断します(同法40条)。
また、再生手続が開始されると、再生手続の対象となっている債権の弁済は、原則として禁止されます(同法85条1項)。
このため、弁護士に民事再生の申立てを依頼したタイミングで、債権者全員に対する弁済を一時的にストップし、事業を継続しながら民事再生の手続を進め、再生計画が決まった後、その再生計画に従って弁済をしていくことになります。
再生計画案の立案
民事再生手続の中で、債務者は、再生計画案を作成することになります。
この再生計画案は、債権者の同意を得られ、かつ裁判所に認可してもらうことができる内容にする必要があります。
再生計画においては、債務の一部免除と期限の猶予の基準について記載する必要があります(民事再生法156条)。
例えば、「再生債権のうち、70%について免除を受ける。残りの30%について7年で弁済する」というような一般的な基準を定めることになります。
弁済の期限の猶予は、原則として、再生計画認可の決定の確定から10年を超えない範囲で定める必要があります(同法155条3項)。
弁済率については、10%~30%程度の再生計画が多いようです。
また、再生計画の内容は、再生債権者の間で平等でなければならないのが原則です(同条155条1項本文)。
再生計画の可決
債務者が作成した再生計画は、①再生債権者による多数決による決議と、②裁判所による認可という2つの手続を経て成立することになります。
再生計画案は、①議決権者の過半数の同意(頭数要件)と、②議決権者の議決権の総額の2分の1以上の議決権を有する者の同意(議決権額要件)の両方の要件を満たした場合に可決されます(民事再生法172条の3第1項)。
すなわち、再生債権者の過半数の同意が必要となりますが、債権者の頭数と、議決権数でいずれも過半数の同意を得ることが必要となります。
裁判所による認可決定
再生計画が可決された場合には、裁判所は、不認可要件がない限り、再生計画の認可の決定をします(民事再生法174条1項2項)。
不認可要件は、以下のとおりです。
・再生手続または再生計画の法律の規定違反(同法2項1号)
・再生計画が遂行される見込みがないこと(同2号)
・再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったこと(同3号)
・再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反すること(同4号)
民事再生では、破産手続による配当未満の弁済しかできなくなる場合には再生債権者の一般の利益に反する(同4号)とされています。
このため、再生計画においては、破産した場合における配当以上の弁済をする計画(保有している財産総額以上の金額の弁済)でなければ、裁判所に認可されません。
再生計画が不認可になれば、裁判所の職権で破産手続が開始され、破産配当がなされることになります(民事再生法250条1項)。