法人破産による官報への掲載
1 はじめに
法人破産の手続を行うと、官報に掲載されます。以下では、官報に掲載される内容や、官報の閲覧方法などを詳しく説明していきます。
2 官報とは
官報とは、日本国が、新しく制定した法令や公示事項を一般国民に周知させることを目的として刊行される国の公報であり、行政機関の休日を除き、毎日発行されています。法人破産に関する情報は、官報のうち、裁判所事項に記載されます。
3 官報の掲載内容
裁判所は、法人の破産手続開始の決定をしたときは、直ちに、以下の事項を公告しなければならないと定められています(破産法32条1項)。
①破産手続開始の決定の主文
②破産管財人の氏名又は名称
③破産法31条1項の規定により定めた、破産債権の届出期間、債権者集会の期日、破産債権の調査期間
④破産財団に属する財産の所持者及び破産者に対して債務を負担する者は、破産者にその財産を交付し、又は弁済をしてはならない旨
⑤簡易配当が相当と認められる場合には、簡易配当をすることにつき異議のある破産債権者は、裁判所に対して異議を述べるべき旨
これらの公告事項を官報に記載するための費用は、申立人が負担しなければならず、申立時に予納金として裁判所に納める必要があります。
具体的な記載内容は、以下のとおりです。
令和6年(フ)第〇号
神戸市中区〇〇〇丁目〇番
破産者 株式会社〇
代表取締役 〇〇 〇〇
1 決定年月日 令和6年5月〇日午後〇時
2 主文 債務者について破産手続を開始する。
3 破産管財人 弁護士 〇〇 〇〇
4 破産債権の届出期間 令和6年6月〇日まで
5 財団状況報告集会・一般調査・廃止意見聴取、計算報告の期日 令和6年7月〇日午後〇時
神戸地方裁判所
もっとも、中小企業においては、金融機関からの借入れにおいて、通常は代表取締役も連帯保証人となっているため、法人破産をする場合には、同時に、代表取締役の個人破産を申し立てることが多いです。そのため、代表取締役の個人破産についても、官報に掲載される結果、上記の事項のみならず、代表者個人の住所も掲載されることになります。
4 官報の掲載目的
法人破産に関する情報を官報に掲載する目的としては、当該法人の債権者や利害関係人に、破産開始決定がなされた事実を知らせて、破産手続に参加する機会を与えることや、破産の事実を知らない者が、新たに取引関係に入ることを防ぐことが挙げられます。
法人破産の申立てを行う場合、申立人が提出する債権者一覧表に記載された債権者に対しては、破産者の資産を換価した後、配当が行われますが、申立人や裁判所が把握していない債権者に対しては、裁判所からの配当通知がなく、破産手続に参加できなくなってしまうため、官報に掲載することで、全ての債権者に対して、破産手続への参加の機会を与えることとしています。
なお、債権者一覧表に記載された債権者に対しては、官報に記載された公告事項について、別途裁判所から通知がなされます(破産法32条3項)。
5 官報の閲覧方法
官報を閲覧する方法としては、以下の方法があります。
①官報販売書で購入する方法(官報販売所等一覧 – インターネット版官報 (npb.go.jp))
②国立印刷局のインターネット版官報サイトを利用する方法(インターネット版官報 (npb.go.jp))
官報は、誰でも入手可能であり、②のインターネット版官報であれば、直近90日間分については、全て無料で閲覧することができます。
もっとも、上記のとおり、行政機関の休日を除き、毎日発行されているため、破産についての情報を一般の人々に知られる可能性は低いといえます。
6 まとめ
上記のとおり、法人破産をした場合、官報に、会社名、会社住所、代表者名等が掲載されることになりますが、法人の債権者や利害関係人以外の人にこれらの事実を知られるリスクは低いでしょう。
法人破産による影響についてご不安のある方、法人破産をするか迷われている方は、是非弁護士にご相談ください。