法人破産と不渡り
第1 はじめに
これまで「あの会社が不渡りを出したらしい。」というような話を聞いたことがあるのではないでしょうか。この「不渡り」とは、金融機関へ持って行った約束手形や小切手が決済できない、すなわち現金化することができなかった場合をいいます。
不渡りは、会社の資金状態が悪化した際に起こるケースがほとんどだと思われますが、そうした会社は、何とかして会社の立て直しを図るのか、あるいは破産に向けて動き出すのか検討しなければならない局面に置かれていることになります。今回はこうした不渡りと法人破産について取り上げたいと思います。
第2 不渡りの種類
1 1号不渡り
一般に「不渡り」という言葉が使われる時は、この1号不渡りを指していることが多いと思われます。「1号不渡り」とは、典型的には、手形や小切手を振り出したものの、当座預金口座(小切手や手形の支払に用いられる口座)の残高が、手形や小切手に記載されている金額欄の額に足りておらず、銀行として支払いを行えなかった場合をいいます。
この1号不渡りを出したからといって、即座に会社が倒産してしまうわけではありませんが、会社が不渡りを出すと、金融機関が手形交換所に対して「不渡届」を提出し、最終的には銀行が不渡りを出した会社の存在を知ることになります。
なお、これまで各金融機関は、手形を全国に所在する手形交換所に持ち寄って交換を行ってきましたが、令和4年11月4日からは、手形の交換を電子データ化した「電子交換所」での取引に移行したため、手形交換所は廃止されるに至っています。
不渡りの情報を得た銀行としては、当然、返済の見込みの薄い会社に対して新たな貸付を行うことを避けますので、会社にとって1度でも不渡りを出すというのは、今後の会社経営にとって大きな不利益を伴うことになるのです。
さらに、1回目の不渡りから6か月以内に2回目の不渡りを起こしてしまうと、会社として今後2年間の当座取引が停止されてしまいます。当座取引を停止された会社は現金取引を行わざるを得なくなりますが、現金がないからこそ不渡りを出しているわけですから、この時点で会社は実質的な倒産状態に追い込まれることになってしまいます。
2 0号不渡り
1号不渡りは、手形振出人の信用状況に起因する不渡りでしたが、そうした信用状況とは無関係に起こるものが「0号不渡り」です。
0号不渡りの具体例としては、手形の券面に記載ミスがあるなどの形式的不備が手形に認められる場合、手形の呈示期間(銀行に対して手形の現金化を求められる期間)を徒過してしまった場合、手形の支払期日より前に手形の現金化を求めた場合が挙げられます。
0号不渡りは、手形振出人の信用状況とは無関係ですので、1号不渡りの場合と違い、不渡届が作成されることもありませんし、当座取引の停止といったペナルティーが課されることもありません。
3 2号不渡り
ここまで紹介した1号不渡りにも0号不渡りにも該当しない不渡りを、「2号不渡り」と呼んでいます。例えば、手形が偽造・変造された場合、詐取・盗難にあった場合、手形を紛失した場合などが挙げられます。
第3 おわりに
ここまで不渡りと会社の破産に関して説明してきました。手形の不渡りというのは破産を考えるきっかけの一つにすぎません。法人を破産させるにも資金が必要となりますので、会社が完全な自転車操業となり資金繰りが立ち行かない状態になってしまうと、破産するという道すら閉ざされかねないことになってしまいます。
会社の資金状態が悪化していくにつれて、法的に取ることのできる手段も減っていってしまいますので、資金繰りにお悩みの場合は、なるべく早い段階で専門家への相談を検討して欲しいと思います。