介護施設の破産に関するコンテンツ

1 高齢者・介護施設の自己破産

近年施設の運営主体が株式会社であっても,社会福祉法人であっても,運営がうまくいかず,資金繰りのめどがつかなくなり,自己破産を選択する介護施設が増えてきています。民事再生手続きであれば,今まで通りいかなくとも事業自体は継続できるため問題ありませんが,利用者の方がいる中で自己破産を選択すると様々な問題が発生してきます。

 

2 高齢者・介護施設の自己破産時の問題点

高齢者入居施設の場合、現実に、入居者がそこで生活しており、事業停止はすなわち、入居者の生活場所がなくなることになります。入居者の中には、身寄りがない方もおり、突然その施設が閉鎖されると、全く行先がない場合もありますので、入居者の今後の生活場所を確保せずして、事業を停止するわけにはいきません。
日ごろから資金繰りの計画を立てる事は当然ですが、資金がショートするかもしれないというリスクはいち早く把握し、事業継続を断念することになっても、入居者の今後の生活場所を確保するために一定の時間を要する事を意識する必要があります。

3 自己破産前に行うべき入居者へのフォロー

入居者の事を考慮し,自己破産ではなく,介護や入居施設部門を事業譲渡することも考えられます。もっとも、事業譲渡先が見つからなかったりした場合には入居者へのフォローが必要となります。入居者の生活場所を確保するため、従前の生活環境と変化がないような施設へ移れるよう心掛けておく必要があります。また、可能な限り、入居者が新たな保証金等の負担がないように交渉していく必要もあります。
入居者へのフォローは必須であるため、しっかりと受け入れ先施設と交渉をしていかなければなりません。

4 入居者生活保障制度

有料老人ホームが倒産した場合は、すでに施設側へ支払ってしまった入居一時金については、平成18年4月以降に有料老人ホームの設置届出を提出した有料老人ホームが、入居一時金の保全措置を講じる義務があります。平成18年3月以前に設置届を提出した有料老人ホームに関しては、保全に務めることが努力目標となっています。義務ではないから講じる必要がないというわけではなく、上記のとおりできる限り入居者へのフォローは最大限していく必要があります。
保全措置とは、有料老人ホームが破産となり、未償却部分が返還されない場合に、有料老人ホームに代わり、損害保険会社や銀行、公益社団法人有料老人ホーム協会等が、500万円を上限として未償却部分の金額を利用者に支払う制度です。公益財団法人有料老人ホーム協会は、「入居者生活保障制度」という制度も設けており、介護事業者の倒産により、有料老人ホームからやむを得ず退去しなければならない場合には、登録された利用者へ最大500万円の保証金が支払われます。入居者を退去させなければならない状況が生じた場合には、このような保全措置を早急に講じる必要があります。

5 自己破産申立ての流れ

(1)破産申立ての意思決定

まずは、法人として、破産申立てを行うことの意思決定をしなければなりません。
株式会社の場合、取締役全員の同意があれば自己破産として、容易に破産手続が開始されますが、取締役の一部が反対する場合は、自己破産ではなく、「準」自己破産という手続になり、「破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない」(破産法19条3項)ため、申立の際に必要とされる資料が増えます。
なお、社会福祉法人やNPO法人が支払不能に陥っている場合、理事は、破産を申立てる義務を負っています。(社会福祉法46条の2第2項、特定非営利活動促進法31条の3)

(2)スケジュール設定

次に破産申し立てを行う具体的な時期を決めていきます。破産申し立てをする際に裁判所へ予納金を納めなければなりませんので、資金がショートする前に具体的な時期を決定しておかなければなりません。

(3)事業譲渡先の選択

入居者の生活を確保するという観点から事業譲渡を行い、施設の運営を引き継いでくれるところを探します。上記のとおり、譲渡先については入居者の生活環境が変わらないような施設を選択していくべきです。

(4)申立書の作成及び提出資料の準備

法人の資産や負債の状況が資料によって明らかになった後、裁判所に提出するための申立書を作成します。法人の過去から現在までの資産と負債の状況や、なぜ破産申立てをせざるを得なくなったかなどを申立書に記載します。また通帳や決算報告書、賃金台帳等の資料も裁判所へ提出しなければならないことから、資料の取り付けや準備も行っていきます。

(5)申立書の提出

法人の本店や主たる事務所を管轄する裁判所に申立書を提出します。裁判所は申立書を審査し、破産手続開始の原因である、支払不能又は債務超過状態であることを認めた場合は、破産手続開始決定を出します。そして破産管財人が選任され、破産管財人と引継ぎの面談や打合せを行っていきます。

6 破産申立て後

破産手続開始決定がなされると法人の資産に関する全ての権限は破産管財人に属することとなり、取締役や理事は権限を失います。そのため勝手に資産を処分したりすることは厳禁となります。破産管財人は、法人の資産や取引等について調査し、法人の資産を売却するなどして債権者に対する配当をおこなっていきます。何か月かに1回債権者集会が裁判所にて開かれ、破産管財人から進捗についての報告がなされていきます。
配当によって、一部しか債権の回収ができなかったとしても、破産手続が終了することによって法人は消滅するので、債権者は残額について回収することはできません(ただし、代表者や取締役などが保証人になっている場合は別です)。

 

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