事業再生の注意点
1 はじめに
・複数の事業の内ひとつ若しくは複数の事業の売上が激減・低迷している
・事業計画が当初の想定とおり進んでいない
・赤字決算が続き資金繰りが苦しくなってきている
このような状況にお悩みの方がいらっしゃるかと存じます。これらの状況の場合,廃業や法人破産に陥る前に,事業再生による会社の立て直しを図ってみるのも一つの手段です。
2 事業再生とは
事業再生とは、業績不振や債務超過が原因で会社が倒産する状態に陥った際に、そのまま会社を清算するのではなく、債務の一部免除や返済期間の繰り延べなどを行い、事業の再構築をすることです。事業の再構築は採算部門と不採算部門を明確にし、不採算部門からの撤退や資本の増強を実行する、事業そのものを別会社に譲渡するなど、経営の健全化を目指します。
なお、事業再生のポイントとして、お金になるからと手当たり次第に資産売却や処分を行うと、事業価値は大きく毀損することになるので、再建の見込みがある場合には、先ずは再建計画をきちんと立てて事業再生を目指すことが必要不可欠です。
3 事業再生のメリット
①事業の存続ができる
②従業員の雇用が確保できる
③企業の社会的信用を維持できる
④資金繰りの見直しができる
4 事業再生のリスク
①資金繰りの見直し失敗
不採算部門を別会社に譲渡したり,事業閉鎖を行ったりしても黒字決算の見通しがたたない場合もあります。事業再生が上手くいかなかった場合,法人破産を早めにしておいた方が債務額を抑えられたという場合もあります。このリスクへの対応としましては,事業や会社全体について第三者評価を税理士や弁護士などに依頼し、客観的に分析してもらい、法的助言をうけることが重要です。
②スポンサー不足
事業再生を行うには、財務状態の把握や再生計画の策定だけでなく、事業運営のための資金確保やスポンサー企業の支援など、さまざまな手続きが必要です。リスクとして、黒字化の見通しのない事業やスポンサーのつかない事業しかない場合には、事業再生ができません。更に、資金繰りのために黒字事業や闇雲に不動産等を売却してしまうと、先々となって事業再生をする運営資金が尽きてしまいます。このような状況に陥らないよう事業承継M&Aを実施している会社に依頼し事業継続にマッチした会社を仲介して貰うことが考えられます。
5 事業再生の条件
①資金繰り正常化の実現
資金繰りにつきまして金融機関と交渉し、債務免除や弁済のリスケジュール等を行い、弁済の余地があることが必須条件となります。そのためには、借入している金融機関から理解を得るための交渉材料を有していることに加え、新たなスポンサーからの投資を得ること等により資金繰りが正常化できれば、事業再生は可能となり、手続きを進めていくことができます。
②事業の維持・存続
事業再生では、不採算事業の廃止や人員整理などで、体制改善を行います。会社の各事業を見直した結果、どの事業も不採算事業であれば立て直すことは困難です。事業そのものにニーズがなく、今後売上が上がる見込みがないような場合には、事業再生ではなく法人破産を選択せざるを得ない可能性があります。
③スポンサーの協力
上記①で述べたとおり、金融機関と交渉し債務免除や弁済のリスケジュールといったことについて協力してもらう必要があります。
6 事業再生の方法
①М&Aによる事業再生
М&Aによる事業再生ですが,第三者からの支援や投資ファンドによる再生、株式譲渡や会社分割などがありますが、ここでは第三者、所謂スポンサーの支援によるМ&Aと投資ファンドによるМ&Aを紹介します。
②事業再生ADRによる事業再生
ADRとは、「裁判外紛争解決手続(Alternative Dispute Resolution)」 の略称で、訴訟手続によらず民事上の紛争を解決する方法です。公正な第三者が関与して、その解決を図る手続きです。事業再生ADRはADRの一種で、債権者と債務者の合意に基づき債務を猶予・減免することにより、経営困難な状況にある企業を再建する手続きです。
③民事再生による事業再生
民事再生は、再生計画を立て、その計画につき債権者の同意と裁判所の許可を得て、計画を遂行し会社を再建する手続きです。再生計画では次のような内容を盛り込むことが一般的です。
・債務を一部免除してもらう
・債務の返済スケジュールを変更してもらう
・不採算部門を廃止する
・人員整理を行う
民事再生は、再建型倒産手続の基本類型です。法的整理で事業再生をする場合、ほとんどのケースで民事再生を利用します。
7 事業再生の際の相談先
事業再生を検討されている場合、誰に相談してよいかわからなくなる場合があります。相談先として①弁護士②税理士③М&Aコンサルティング会社④事業再生アドバイザーが挙げられます。
弁護士は、事業再生だけでなく法人破産などの倒産事件を取り扱い、またそれに伴い経営者個人の債務整理を行う専門家です。法的整理による破産ないし事業再生の手続きをご検討されている場合は、裁判所への申立てが必要であり、弁護士が対応することになります。是非、この分野に詳しい弁護士にご相談ください。