旅館・ホテル業の破産の特徴
旅館やホテル業を営む事業主が破産をする場合,まずもって対応を考えないといけないのが宿泊客の問題です。現在宿泊中のお客様がいる状態で破産手続が始まると,お客様に多大なご迷惑を掛けることになるため,できれば,宿泊客がいない状態で破産をし,以後のお客様の宿泊はお断りすることが望ましいでしょう。このため,取り付け騒ぎになるような恐れがないのであれば,廃業日を決めたうえ,以後の予約は受け付けず,すでに予約されたお客様には速やかにキャンセル対応を取ることが考えられます。
このような対応が取れない場合は,破産手続の開始直後,直ちに予約されたお客様に廃業したことを連絡し,廃業したことを知らずに来てしまうお客様が生じないようにすることが求められるでしょう。お客様の中には,無理にでも宿泊させてほしいと希望する方もいらっしゃるかもしれませんが,すでに従業員も解雇されて宿泊サービスを提供できる体制にはないでしょう。そうしますと,お客様から,すでに支払い済みの宿泊費用の返還を求められことになると思いますが,この返還請求権は,一般の破産債権にすぎず,優先的に返還を受けられる性質のものではないため,これに応じることもできません。仮に宿泊費用の返還に応じてしまうと,後に破産管財人が否認権を行使し,お客様に対し,返還済みの宿泊費用を破産財団に戻すよう請求される可能性が生じます。こうなってしまうと,かえってお客様に迷惑をかけることになってしまうため,やはり,宿泊費用の返還には応じるべきではありません。
なお,前もって宿泊費用は支払い済みという場合,クレジットカードによる決済がなされていることが多いかと思います。この場合は,廃業を知ったクレジットカード会社からお客様に返金がなされる可能性がありますので,お客様からクレジットカード会社に問い合わせてみてもらうことになるでしょう。
旅館・ホテル業の破産をお考えの際には,破産前に取り得る方法や破産後の計画等についてもお力になれることがあるかもしれませんので,是非この分野に詳しい弁護士にご相談ください。