公認会計士・税理士の先生方へ
1 はじめに
当事務所では、企業再生をはじめ、多くの案件で、公認会計士・税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士の先生方と共同で業務をさせていただいております。
私たち弁護士にとっても、他士業の方々と共同することは、適切に案件を処理するために極めて重要なことであり、先生方にご協力いただくことによって、クライアントにとってベストの解決ができることも多いと実感しております。
特に、企業再生案件におきましては、公認会計士・税理士の先生方との協力は不可欠であると考えております。
2 税理士・公認会計士の方々にご協力いただく場面
企業再生を行う場合、まずは財務状況を把握することからはじまります。資金繰りの状況を把握し、なぜ経営不振に陥ることになってしまったのか、問題点を洗い出します。具体的には、貸借対照表、損益計算書、資金繰り表等から、事業が回っているか、事業の強みと弱みはどこにあるのか等を分析し、事業のどの部分を再建させるのか、どの負債をどれだけ圧縮すれば立ち直れるのか、そのために資金が残っているか等を分析し、今後の見通しについても検討していくことになります。
この点については、弁護士だけでは正確な分析が難しいところでもありますので、税理士や公認会計士の方々にもご協力をお願いすることになります。特に、これまでその企業の対応をされていた税理士の方は、その会社の財務状況について特に詳しいことと思いますので、ご協力いただきたいと思います。
3 弁護士の強み
(1)適切な手法の選択
企業活動が経済的苦境に陥った際には、民事再生・会社更生、破産・特別清算はもとより、今日では、事業再生ADRや中小企業再生支援協議会、特定調停を利用した私的整理手続など様々な手法を選択できます。会社の状況・債権者の数・債務金額等によってどの手法を選択するのが適切かは異なってきます。誤った手法を選択してしまうと、場合によっては途中で別の方法に切り替えざるを得ないこともあり、時間・手間が無駄になってしまうおそれがあります。
それぞれの手続きのメリット・デメリットを把握しており、それぞれの手続きについての経験を有していることは弁護士の強みの一つです。弁護士は、知識と経験をもとに、個々の企業様に合わせた適切な手続き選択を行うことができます。
また、弁護士が間に入ることで、裁判所等への申し立てをスムーズに行うことができますし、やむを得ずに法人破産に方針を変更する場合にも、手続きを切り替えて柔軟に対応することができます。
(2)代理人としての交渉
また、代理人として金融機関や債権者と交渉することができるのも、弁護士の大きな強みです。例えば、私的整理手続きを選択した場合には、債権者との交渉が手続きの中心になるため、どのような交渉を行うかが重要です。
4 おわりに
このように、企業再生案件等におきましては、一つの士業だけで解決するのではなく、弁護士・税理士・公認会計士をはじめとする各士業が共同して一つの案件に取り組むことで、より良い解決を目指すことができます。
また、企業再生を行う案件では、迅速に企業の状態を分析し、手続きを選択することが必要です。公認会計士や税理士の先生におかれましては、弁護士をすぐに入れるよう企業様にアドバイスをしていただければと思います。
この記事では企業再生を行う場合を例に挙げましたが、そのほかの場面でも弁護士が介入したほうが良い場面はあるかと思います。企業様から法的なアドバイスを求められた場合や、弁護士による協力が必要だと感じた場合には、お気軽にご相談ください。