経営者保証ガイドライン
目次
1 はじめに
経営者保証ガイドラインとは,経営者個人が会社の連帯保証人となる場合の取扱いについて定めた指針です。中小企業,経営者,金融機関共通の自主的なルールという位置づけられており,法律ではありません。そのため,法的拘束力はありませんが,各当事者がこのガイドラインを遵守することが期待されています。
中小企業が破産する場合,経営者個人も破産しなければならないとお考えの方も多いのではないでしょうか。しかし,経営者保証ガイドラインを利用すれば,経営者個人は破産せずに済む可能性があります。以下で詳しく解説します。
2 経営者保証ガイドラインを利用するメリット
経営者保証ガイドラインを利用して債務を整理すると,破産する場合と比べて以下のメリットがあります。
(1)マイホームが残せる
破産をすると,マイホームを残すことはできません。マイホームは売却して,売却益を債権者に分配しなければならないからです。しかし,経営者保証ガイドラインでは,一定の場合に「華美でない自宅」を残すことができる旨規定しています。今住んでいるマイホームを追い出されることがないため,家族への影響も最小限に抑えることができます。
(2)手元に残せるお金も増える
経営者保証ガイドラインを利用すると,破産する場合よりも多くのお金を手元に残すことができます。すなわち,経営者保証ガイドラインを利用した場合,破産時でも残せる資産のほか,「一定期間の生計費」を残すことができます。具体的に「生計費」とは,月額33万円×雇用保険の給付期間(90日~330日)を参考にして決められます。
(3)信用情報機関に登録されない,官報にも掲載されない
破産をすると,官報に掲載され,信用情報機関の事故情報(いわゆるブラックリスト)にも登録されてしまいます。しかし,経営者保証ガイドラインを利用すれば,破産ではないので,官報にも掲載されず,信用情報機関のブラックリストにも登録されません。そのため,経営者個人が再起を図りやすいといえます。
3 経営者保証ガイドラインを利用する条件
経営者保証ガイドラインを利用して債務整理を行うためには,以下の条件を満たす必要があります。
①保証契約の主債務者が中小企業であること
②保証人が個人であり,主たる債務者である中小企業の経営者であること
ただし,以下の場合も例外的に経営者保証ガイドラインの利用が認められます。
・実質的な経営権を有している者,営業許可名義人又は経営者の配偶者(当該経営者と共に当該事業に従事する配偶者に限ります)が保証人となる場合
・経営者の健康上の理由のため,事業承継予定者が保証人となる場合
③主債務者及び保証人の双方が弁済について誠実であり,対象債権者の請求に応じ,それぞれの財産状況等(負債の状況を含みます)について適時適切に開示していること
④主債務者及び保証人が反社会勢力でなく,そのおそれもないこと
⑤主債務者が法的整理手続(破産等)又は準則型債務整理手続(事業再生ADR等)の申立てを行っていること
⑥破産する場合と比べて,対象債権者にとっても経済的合理性が見込まれること
この要件があるため,経営者保証ガイドラインを利用することは,対象債権者にとっても有益といえます。債務が完全にチャラになるわけではなく,減額してもらって少しずつ返済していくことになります。
⑦保証人に免責不許可事由及びそのおそれがないこと
⑧対象債権者全員の同意
4 まとめ
このように,経営者保証ガイドラインを利用した債務整理には条件が多いですが,自宅を残せるなどのメリットも大きく,利用できるのであれば利用しない手はありません。
経営が苦しい中小企業の経営者の皆様は,ぜひ早めに,この分野に詳しい弁護士にご相談ください。